「社内でAIを使おう」と決めたものの、最初に何を任せるかで止まっていませんか。日報、議事録、提案書。候補はあっても、仕事の名前だけでは選びにくいものです。
最初に試すのは、繰り返し発生し、元の資料と照らして人が確かめられ、入力する情報を管理できる作業です。この記事では、候補の比べ方と、試した後に続けるかを判断する方法を紹介します。AIツールの性能比較ではなく、自社の業務選びに絞ります。
「日報をAI化する」ではなく、任せる部分を決める
仕事全体を任せようとすると、入力する資料も確認する項目も増えます。たとえば日報なら、「報告内容を判断する」ではなく「自分で書いたメモを決まった見出しに分ける」。提案準備なら「顧客への提案を決定する」ではなく「公開情報から面談で確認したい質問の案を作る」と切り分けます。
会社としての進め方や役割分担から確認したい場合は、親記事の経営者のAI活用を定着させる実践ガイドをご覧ください。ここからは、最初に試す一つの作業を選びます。
候補を比べる、3つの確認項目
1.同じような作業が、繰り返し発生するか
日々の整理や定例会議の準備など、次にも同じやり方を試せる作業を候補にします。単発の難しい仕事だけを選ぶと、修正した依頼文を次に活かせるかが分かりません。「いつ、誰が、何を作っているか」を書き出してください。
2.何をもとに、誰が正誤を確かめるか
原文、決定事項、確認済みの資料と比べられる仕事が向いています。「読みやすい文章になった」だけで終わらず、抜けた事実や追加された事実を確認できるかを見ます。確認者が決まらない仕事や、専門的な判断を確かめられない仕事は、最初の候補から外しましょう。
3.入力する情報を、承認された範囲に絞れるか
公開情報や架空の練習データから試せるかを確認します。顧客名を消しただけで、非公開資料を入力してよいとは限りません。社内ルール、契約、利用するAIの保存・学習・共有設定を確認し、必要な承諾を得てから扱ってください。判断できなければ入力を止め、管理担当者へ確認します。
入力ルールを先に決めたい方は、社内AIのリスクを減らす方法へ。業務を選ぶことと、情報の扱いを決めることは、一緒に進めます。
日報・議事録・提案準備を比べるときの例
以下は業務選定のために作った架空の比較例です。実在するお客様の事例や、効果測定の結果ではありません。同じ業務でも、扱う情報と確認担当によって選びやすさは変わります。
| 候補 | 小さく試す作業 | 人が確かめること | 選ぶ前の条件 |
|---|---|---|---|
| 日報 | 架空の業務メモを、実施事項・未完了・次の予定へ分ける | 元メモにない成果や予定を足していないか | 同じ様式で続けて確認できる |
| 議事録 | 架空の会議メモから、決定事項と未決事項を分ける | 提案と決定を取り違えていないか | 内容を知る確認者がいる。録音・実データの扱いは別途確認する |
| 提案準備 | 公開済みのサービス案内から、面談で聞く質問の案を作る | 出典にない料金・仕様・取引条件を補っていないか | 公開情報だけで試せる。送信や提案の決定は人が行う |
この例で、会議内容を確認できる人がいなければ、議事録から始める理由はありません。逆に、日報の元メモが毎回ばらばらで担当者が負担に感じるなら、様式の整理が先です。「AIが得意そう」より、自社で確かめて続けられるかで選んでください。
試す前に、使い方と合格の条件を1枚に書く
候補を一つ選んだら、次の項目を埋めます。AIに作業を頼む人と、結果を確認する人で共有してください。
- 目的:何の手間を減らしたいか。例「日報を書く前のメモ整理をしやすくする」。
- 対象:何をAIに任せるか。例「架空のメモを指定した見出しに振り分ける」。
- 入力:使ってよい資料・使わない情報・承認されたAIの環境。
- 合格の条件:原文にない事実を足さない、必要な項目を落とさない、分からない点を分けて示す。
- 担当:操作する人、原文と照合する人、公開・送信を承認する人。
- 振り返る日:いつ結果を持ち寄り、続けるかを決めるか。
依頼文も短く残しておくと、比較しやすくなります。たとえば「次の架空メモを、実施事項・未完了・次の予定へ分類してください。書かれていない事実は補わず、判断できない項目は要確認として分けてください」。出力の文章が自然でも、人が原文と照合します。
利用できる情報や確認・承認の分担は、自社の規程に合わせてください。参考資料として、デジタル庁の生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(2026年6月12日、PDF)にも利用範囲や活用できるデータの種別を周知する考え方があります。政府向けのルールであり、この記事の比較表は企業が最初の作業を選ぶための提案です。
作る時間だけでなく、確認・手直しまで比べる
試す前の作業とAIを使った作業を、同じ完成条件で比べます。AIへの指示、出力待ち、内容確認、手直し、最終承認までを含めて記録してください。入力資料の量や難しさが違う場合は、その違いも残します。
- 時間:作成・確認・手直しに、どれだけかかったか。
- 品質:抜け・誤り・原文にない追加が、どこにあったか。
- 負担:確認担当が毎回やり直していないか。
- 再利用:同じ依頼文や様式で、次の作業にも使えたか。
記録は「今回の対象/元資料/AIに任せた部分/確認者/誤り・修正内容/手直しを含めた時間/次の判断」の形で残せます。数値を取っていなければ、「効率が上がった」と決めず、確認できた変化をそのまま書きます。
そのまま使える部分があり確認も続けられるなら継続。出力形式が合わないなら対象や依頼文を修正。確認できない、情報を適切に扱えない、手直しが重い場合は止めて業務を選び直します。一度うまくいっただけで、全社員へ広げる必要はありません。
担当者が替わっても続けるには、成功した出力だけでなく、修正例と確認方法を引き継ぎます。役割分担の考え方はウェブ内製化の進め方も参考になります。ウェブ運用の記事ですが、作業と確認の担当を分けて共有する視点を、自社の業務に合わせて検討できます。
社内AI導入で最初の業務を選ぶときのFAQ
今日決めるのは、業務名より「任せる部分」
いま手間がかかっている仕事を一つ挙げ、その中でAIに任せたい部分を書いてみてください。元資料、確認する人、入力してよい情報が揃うなら、小さく試す準備ができます。揃わない場合は、その不足を整理するところから始めましょう。

