「ウェブアクセシビリティ対応って、うちの会社も必要なの?」2024年4月の法改正以降、こうした問い合わせが急増しています。「専門用語が多くて何から手をつければいいかわからない」「自社のホームページが法律に違反していないか不安」という声は、Web担当者になったばかりの方であれば当然の感覚です。この記事では、ウェブアクセシビリティの意味から法律との関係、そして具体的に何をすればいいのかまで、初めての方にもわかりやすく解説します。
ウェブアクセシビリティとは「誰でも使えるホームページ」にすること

ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害の有無にかかわらず、すべての人がホームページの情報やサービスを利用できる状態を指します。「アクセス(近づく・利用する)」と「アビリティ(能力)」を組み合わせた言葉で、「誰もが利用できること」という意味です。
たとえば、視覚に障害のある方はスクリーンリーダーという画面読み上げソフトを使ってホームページを閲覧しています。このとき、画像に説明文(代替テキスト)がついていなければ、その画像が何を伝えているのかまったくわかりません。また、マウス操作が難しい方はキーボードだけでページを移動するため、キーボード操作に対応していないサイトは使うことすらできないのです。
よく混同されがちな「ユーザビリティ(使いやすさ)」との違いも押さえておきましょう。ユーザビリティは主に一般的なユーザーにとっての使い勝手を指しますが、ウェブアクセシビリティはあらゆる身体特性・利用環境の人が「そもそもアクセスできるかどうか」というより根本的な概念です。つまり、ユーザビリティの前提として、まずアクセシビリティが確保されている必要があります。
なぜ今、企業にアクセシビリティ対応が求められるのか

ウェブアクセシビリティの重要性は、「誰も取り残さない」という社会的な観点だけではありません。企業にとっても、ビジネス上の実質的なメリットがあります。
まず、対象ユーザーの広がりです。日本では65歳以上の高齢者が人口の約3割を占め、何らかの障害のある方は約1,100万人以上にのぼります。加えて、一時的なケガや疲れ目、騒がしい場所での閲覧など、誰もが「情報にアクセスしにくい状況」に置かれる可能性があります。アクセシビリティを高めることは、こうした潜在的なユーザー層にもホームページの情報を届けることを意味します。
さらに、アクセシビリティに配慮したホームページは、検索エンジンにとっても理解しやすい構造になる傾向があります。画像への代替テキストの設定、適切な見出し構造、明確なリンクテキストといった対応は、SEOの基本施策とも重なっているのです。
また、災害時の情報提供においてもアクセシビリティは不可欠です。地震や台風などの緊急時に、ホームページが使いにくければ、必要な情報にたどり着けない人が出てきます。BtoB企業であっても、自社の取引先や社員が情報を取得する手段としてホームページを利用する以上、アクセシビリティの確保は事業継続の観点からも重要な取り組みといえます。
まず取り組みたいアクセシビリティ対応の具体例
1. 画像に説明をつける

目が見えにくい人のために、画像に「代替テキスト」という説明文をつけます。
これにより、スクリーンリーダーという音声で内容を読み上げるソフトが、画像の内容を伝えることができます。
2. キーボードだけで操作できるようにする

マウスを使えない人のために、キーボードだけでウェブサイトを操作できるようにすることも大切です。
例えば、タブキーを押すことでリンクやボタンを順番に選べるようにする工夫があります。
3. 色の使い方に気をつける

色の見え方は人それぞれ違います。そこで、文字と背景の色の組み合わせを工夫して誰でも読みやすいようにします。
例えば、文字と背景の色のコントラスト(色の差)を高くして、見やすさを高めることが大切です。
4. 動画に字幕をつける

耳が聞こえにくい人のために、動画に字幕をつけることで音声の内容を文字で伝えることができます。これにより、音声の情報を目でも理解できるようになります。
5. わかりやすい言葉を使う

難しい言葉や専門用語はなるべく使わず、誰でも理解できるような簡単な言葉を使うことが大切です。これにより、多くの人が情報を正しく理解できるようになります。
文章でまとめると次のようになります。
ウェブアクセシビリティと聞くと、大がかりなシステム改修が必要なのではと身構えてしまう方も多いのですが、実は身近なところから始められる対応もたくさんあります。ここでは、Web担当者がすぐに着手できる代表的な対応を解説します。
最も基本的な対応のひとつが、画像への代替テキスト(alt属性)の設定です。スクリーンリーダーを使っている方にとって、代替テキストのない画像は「画像」とだけ読み上げられ、何が表示されているかわかりません。たとえば社員の集合写真であれば「株式会社〇〇の社員集合写真」というように、画像の内容を端的に伝える説明文を設定しましょう。WordPressであれば、メディアライブラリの「代替テキスト」欄に入力するだけで対応できます。
次に見落としがちなのが、キーボード操作への対応です。マウスを使えない方がTabキーやEnterキーだけでサイト内を移動できるかどうか、一度自社サイトで試してみてください。お問い合わせフォームの送信ボタンにキーボードでたどり着けないケースは意外と多いものです。
色のコントラスト比(文字色と背景色の明るさの差)も重要なポイントです。WCAGではレベルAAの達成基準として「4.5:1以上」のコントラスト比が求められています。薄いグレーの文字を白い背景に配置しているサイトは要注意です。無料のチェックツールで簡単に確認できますので、まずは自社サイトのトップページだけでもチェックしてみることをおすすめします。
動画コンテンツを掲載している場合は、字幕の付与も欠かせません。聴覚に障害のある方はもちろん、音声を出せないオフィス環境で閲覧しているユーザーにとっても、字幕があるかないかで情報の到達度は大きく変わります。
そして意外に見落とされがちなのが、テキストのわかりやすさです。専門用語を多用したページは、すべてのユーザーにとって理解しにくいものです。難しい用語にはカッコ書きで補足を加える、一文を短く区切るといった工夫だけでも、サイト全体の読みやすさは大きく向上します。
2024年4月の法改正で企業に求められることとは

2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行されました。この改正により、これまで努力義務にとどまっていた民間事業者の「合理的配慮の提供」が法的義務へと格上げされています。
合理的配慮とは、障害のある方から「社会的な障壁を取り除いてほしい」という申し出があった場合に、過重な負担にならない範囲で必要な対応を行うことです。たとえば飲食店であれば、車椅子の方が来店された際に備え付けの椅子を片付けてスペースを確保するといった対応がこれにあたります。
ここで多くの企業が誤解しがちな点があります。「ウェブアクセシビリティが義務化された」と思われがちですが、正確には、義務化されたのは合理的配慮の提供です。ホームページのアクセシビリティ確保は「環境の整備」として引き続き努力義務という位置づけです。しかし、環境の整備は合理的配慮をスムーズに行うための基盤であり、両者は密接に関連しています。日頃からホームページのアクセシビリティを意識して整備しておくことで、障害のある方からの申し出があった際にも迅速に対応できるようになるのです。
なお、法律に違反した場合の直接的な罰則はありませんが、主務大臣からの報告徴収・助言・指導・勧告の対象となり、報告を怠ると20万円以下の過料が科される場合もあります。さらに、対応不備がSNS等で拡散されるレピュテーションリスクも無視できません。障害者差別解消法改正とウェブアクセシビリティの関係については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
知っておきたい基準:WCAGとJIS X 8341-3
ウェブアクセシビリティには、「どこまで対応すればよいか」を判断するための国際基準と国内規格があります。初心者の方も、この2つの名前だけはぜひ覚えておいてください。
まず、世界共通のガイドラインとして「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」があります。W3Cという国際的な標準化団体が策定しており、2023年10月に最新版のWCAG 2.2が正式に勧告されました。WCAGには「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」という4つの原則があり、達成基準がレベルA・AA・AAAの3段階で設定されています。一般的な企業サイトでは、レベルAA準拠を目指すのが標準的な目標です。
日本国内では「JIS X 8341-3:2016」という規格が基準となっています。これはWCAG 2.0の内容をそのまま日本の規格として採用したもので、公的機関のホームページではレベルAA準拠が求められています。なお、2026年度にはWCAG 2.2の内容に基づく改正が見込まれており、改正原案作成委員会も2025年10月に発足しています。今からWCAG 2.2の追加基準(スマートフォンでのタッチ操作や認知障害への配慮など)も意識しておくと、将来の規格変更にもスムーズに対応できます。
とはいえ、これらの規格を読み解き、自社サイトが本当に基準を満たしているかを正確に判断するのは、専門知識なしでは非常に困難です。アクセシビリティチェックがなぜ難しいのかという現実については、こちらの記事でも実務の現場視点から解説しています。
自社サイトの対応状況を確認するには

「うちのホームページは大丈夫だろうか」と不安を感じたら、まずは現状を把握することが第一歩です。画像に代替テキストが設定されているか、キーボードだけですべての操作ができるか、コントラスト比は十分か——こうした基本的なポイントを、ぜひ自社サイトで確認してみてください。
ただし、自社だけで対応状況を正確に判断するのは決して簡単ではありません。WCAGやJIS規格には多数の達成基準があり、ツールによる自動チェックだけでは見つけられない問題も数多く存在します。実際にスクリーンリーダーで操作したり、キーボードのみで一通りの導線を辿ったりする手動検証が不可欠で、これには専門的なノウハウが求められます。ウェブアクセシビリティチェック業者の選び方を知っておくことで、適切なパートナー選びにも役立ちます。
ハマ企画では、JIS X 8341-3:2016に基づいた「ウェブアクセシビリティ チェック」を提供しています。2004年からアクセシビリティに取り組み、2005年にはアックゼロヨン・アクセシビリティアワードで経済産業大臣賞を受賞。以来20年以上にわたり、官公庁・自治体・民間企業のアクセシビリティ対応を支援してきた実績があります。初回のヒアリングから診断、具体的な改善提案、改善後の再チェックまで、ワンストップで対応いたします。
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まとめ:アクセシビリティ対応は「いつかやる」では間に合わない
ウェブアクセシビリティは、単なるコンプライアンス対応にとどまりません。アクセシビリティを向上させることで、高齢者や障害のある方を含むより多くの人が自社サイトを利用できるようになり、潜在顧客の拡大やブランドイメージの向上にもつながります。
2024年4月の法改正に加え、2026年度にはJIS X 8341-3の改正も見込まれています。対応すべき基準は今後さらに増えていくため、「いつかやろう」と先延ばしにするほどコストと負担が膨らみます。現行のJIS X 8341-3:2016への対応を確実に進めておくことが、将来の規格改正にも備える最短ルートです。
まずは自社サイトの現状を正しく把握することから始めましょう。ハマ企画のウェブアクセシビリティチェックサービスなら、経験豊富な専門スタッフが御社のホームページを診断し、具体的な改善の道筋をご提案いたします。
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