売上を追わない経営

「企業の目的は利益ではない」と言ったのはピーター・ドラッカーでしたでしょうか。
じつは今までこの言葉にピンと来ていなかったのですが…
とある日本企業の経営者の言葉で、理解するヒントがもらえました。

売上をどこまで意識させられるか?

どこで見聞きしたのか…もう忘れてしまったのですが、こんな言葉が脳裏に焼き付いています。
企業が存続する意義は、利益を追求することにある
例えば事業計画書には、この言葉を裏付けるように…
事業を続けるほど利益が増えていく予定を含ませなければ、銀行も融資をしてくれないし、中小企業診断士に怒られそうな気さえします。
しかしながら、この利益とか売上という数字。
経営者ならまだしも、自分がただの一従業員だったりすると…なかなか意識するまでに至らない気がしませんか?
パートとかアルバイトであれば言うまでもないでしょう。
売上」ではない、違う言葉に置き換えて目標にすることがポイントです。

売上を連呼すると従業員は困惑する

以前に在籍していた会社で、店長を務めていたことがあります。
当然ながら「店長会議」というものが毎月、会社の本部で行われまして…
売上の良い店舗の店長は褒められて、成績の悪い店舗の店長は怒られるわけです。
売上が悪いぞ!」と、怒られた日には…
やっぱり、お店の従業員たちにも「売上を意識しよう!」って言ってしまっていました。
しかし、そういう時はうまくいきません。
そりゃそうです。
店長会議からお店に帰ってきた店長が、不機嫌で、普段はそんなにうるさくないのに…
急に「売上を!」「目標まであとどれくらい?」って言い出したら…
従業員はゲンナリしてしまいますよね。
でも、店長としての采配が上手くいった時もあったのです。

売上という言葉を使わない経営

どうやったら、従業員ががんばってくれたのか?
それは「売上という言葉を使わなかった時」でした。
私の務めていたお店は「リラクセーション」という種類の施術サービスを行う店舗だったのですが…
お客さまは気に入ったスタッフがいると、次回からは事前にスタッフを指名して予約くださるようになります。
これがポイントでした。
そこで私は「指名のお客さんを増やそう!」と従業員たちに言って回ったのです。
それも「楽しそう」に。
いや、実際楽しいものなのです。
わざわざ、お金を払ってくださるお客さまから先に、「○○さんにお願いしたいわ」と連絡を入れてくださるのですから。
働き甲斐」につながらないわけありません。
それに…お店に勤務して一番イヤなことは「ヒマなこと」なのです。
それを思えば、自分に指名が入るということは、メリットばかりしかないのです。
(人事考課査定にも影響しますしね)
この方法はうまくいきました。
店長が「指名もらえるといいぞ~」と楽しそうに言うものだから…

  • え~? そんなに良いものなのだろうか?
  • どうやったら指名をいただけるのだろう?

と従業員は考え始めます。
先輩スタッフに質問してみたりと…従業員同士の交流も生まれやすくなりました。
言わずもがなですが…
指名が増える、ということは… → お店に予約が増える → 既存顧客が増える → 売上が増える …ということに繋がります。
結果的に売上に繋がるという点がミソだったのかもしれません。
従業員たちは…店長である私自身も含めて…「売上をあげるために」働き出したのではありません。
施術サービスを提供したくて、お客さんに喜んでほしくてその仕事を始めたのです。
「指名を増やす」ということは、お客さまにより感動を与えるようなサービスを心がけるということ。
おそらくそれは、スタッフひとりひとりが目指す姿と、無理なく重なりやすかったのでしょう。

六花亭 亭主 小田豊さんの言葉

私がこのエピソードを思い出したのは、きっかけがありました。
(つまり自分でも忘れていました…汗)
冒頭でも述べた通り「とある日本企業の経営者の言葉」です。
この記事でお伝えしたいのは、私のエピソードよりむしろこちらです。
それは六花亭の小田豊さんの言葉。

■2018年10月4日 放送 六花亭 亭主 小田 豊 (おだ ゆたか)氏 |カンブリア宮殿: テレビ東京
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2018/1004/

売上が目標ではない

テレビ番組での受け答えを見ていて、いい言葉がたくさん出てきました。
なかでも特に印象に残ったのは…

売上目標なし、販売ノルマなし、売上を否定するわけではないが、
「売上が目標ではない」ことははっきりしている。

という部分でした。
「それでうまくいくのだろうか?」と疑いたくなる気持ちになりましたが、はたと自身の昔のことを思い出したわけです。
その他にも…

  • あなたの今日の仕事は、たった一人でよい
  • 判断する基準はそれが「企業の永続性につながるかどうか」
  • 売上ではなく客数
  • 従業員の意見を集めた社内報を毎日30年

といった、印象深い言葉が飛び出してくる内容でしたので、気になる方はテレビ東京のビジネスオンデマンドというサービスで配信されていますので、チェックしてみてください

■熱狂ファンを生み続ける “六花亭” 震災に負けない!驚きサバイバル術の全貌【カンブリア宮殿】|テレビ東京ビジネスオンデマンド
http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/cambria/vod/post_163470/?trflg=1

売上ではない違う言葉に置き換えて経営

というわけで、売上を追わない経営をするためには…
売上」ではない、違う言葉に置き換えて目標にすることがポイントではないだろうか?
という記事でした。
六花亭の場合は「客数」に注目されていました。
しかしその決断には、「企業の永続性につながること」を考え抜き「地元のお客さまを大切にし、東京には進出しない」といった、揺るぎない判断があるからこそ…にも思えます。

  • 何を目指せばよいのか?
  • 何が発端だったのか?

そこのところに、売上に代わる言葉のヒントが隠されている気がします。
そしてそれはきっと、会社によって様々な形があるのでしょう。